低温調理

黄色ブドウ球菌 食中毒予防のために

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黄色ブドウ球菌が原因の食中毒は平成29年では、発生件数22件 2.2%、患者数336人 2.0%となっている。しかし、過去10年の患者数の推移を見てみると患者数訳600~1400人で推移している。

概要

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) 食品中で産出したエントロドキシンを摂取することで食中毒を引き起こす。環境中に広く分布し、健常人の鼻腔、咽頭、腸管等にも生息しており、その保菌率は約50%といわれている。

出展:「食品衛生の窓」東京都福祉保健局ホームページより

特徴

化膿菌の一つとしても知られており、手指等の傷口から感染して化膿巣を形成する。この化膿巣には本菌が多量に存在しているため、食品取扱者を介した食品汚染の機会は高くなっています。本菌は家畜を含むほ乳類、鳥類にも広く分布しており、牛乳房炎の起因菌の一つでもあることから、生乳又は食肉を汚染する機会も極めて高い。

発育条件

高濃度(15%)の食塩存在下でも増殖できる。

耐熱性毒素 エンテロトキシンが産生されるのは1046℃の温度域。100℃30分の加熱でも不活性化しません。

原因名 倍加時間 発症菌数 発育条件 至適条件
温度域 pH 水分活性 温度域 pH 水分活性
黄色ブドウ球菌 27分 毒素による発症 6.7~48℃ 4~9.6 0.83以上 35~40℃ 6~7 0.98

倍加時間:世代時間、平均世代時間とも言う。微生物が1回分裂して倍の量になるのに要する時間。(ここでは栄養の十分にある発育に適した条件での数値)

pH:7なら中性、それより大きければアルカリ性、小さければ酸性

水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示される

症状

食品中で黄色ブドウ球菌が増殖し105個/g以上になるとその過程で産生されるエンテロトキシンが発症毒素量に達すると考えられている。

潜伏期間 0.56 時間 平均3時間

嘔吐、疝痛性腹痛、下痢を伴う急激な急性胃腸炎

原因食品

日本では手作業行程を経る食品、にぎりめし、寿司、肉・卵・乳などの調理加工品及び菓子類など多岐にわたっているが、欧米においては、乳・乳製品やハム等畜産物が原因食品として多くみられる。

食中毒事例では、原因食品が冷蔵保存(10℃以下)あるいは高温保存(45℃以上)されていないことが多い。

予防・対策

産生されるエンテロトキシンは耐熱性が高く、通常の加熱調理では活性を失いません。菌を付けない増やさないことが大切です。

  • 手指などに切り傷や化膿巣のある人は、食品に直接触れたり、調理をしたりしない。
  • 手洗い・消毒を十分に行う。
  • 食品は10℃以下で保存し、菌が増えるのを防ぐ。

汚染実態

市販食品を対象とした調査の結果、鶏肉で36%(38/107)、 牛肉で13%(12/95)、豚肉で8%(5/65)から黄色ブドウ球菌が検出された。 (緒方ほか, 2014

死滅温度と時間

D値は菌株、脂肪量、pH、水分活性その他の要素で異なります。D値とは菌数を10分の1にするのにかかる時間。

培養地での黄色ブドウ球菌のD値 (J. Kennedy et al. ,2005)

50℃ 109.7分 55℃ 18.0分 60℃ 6.5

培養地での黄色ブドウ球菌のD値 (Ratih Dewanti-Hariyadi et al. ,2011)

53℃ 64.59 ± 2.9554℃ 23.83 ± 0.80分

55℃ 14.3 ± 0.78分 56℃ 8.78 ± 0.92

一般的に適当とされる5D7Dを達成する加熱時間

7Dつまり初期の菌数から10000000分の1にするのにかかる時間は

55℃で126分 (J. Kennedy et al. ,2005)より計算(一例)

おわりに

食中毒の原因のひとつである黄色ブドウ球菌について、正しく恐れるための参考になればと思います。正しく恐れ、正しく予防・対策をすることで食中毒にならないように。また高齢者、妊婦、小児等の一般的に抵抗力の弱い方については、より一層の注意が必要です。D値を載せてありますが、あくまで黄色ブドウ球菌についてだけのものであり、他にも食中毒の原因となる菌やウイルスなどあります。ですのでこの温度と時間での低温調理が安全であるということではありません。

 

参考:国立感染症研究所HP

農林水産省 食品安全に関するリスクプロファイルシート

内閣府 平成21年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」 社団法人 畜産技術協会作成 平成223

厚生労働省HP

「食品衛生の窓」東京都福祉保健局 HP

公益社団法人 日本食品衛生協会 HP

MPI - Ministry for Primary Industries New Zealand HP

FDA Draft Guidance for Industry: Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food

anses  Data sheet on foodborne biological hazards

Michael P. Doyle and Larry R.Beuchat (1995) ’Food Microbiology Third Edition’

J. Kennedy, I.S. Blair, D.A. McDowell and D.J. Bolton (2005) An investigation of the thermal inactivation of Staphylococcus aureus and the potential for increased thermotolerance as a result of chilled storage, Journal of Applied Microbiology 2005, 99, 1229–1235

Shafiei, Y., Razavilar, V. and Javadi, A. ’Thermal Death Time of Staphylococcus Aureus (PTCC=29213) and Staphylococcus Epidermidis (PTCC=1435) in Distilled Water’ Australian Journal of Basic and Applied Sciences, 5(11): 1551-1554, 2011

Yves Le Loir, Florence Baron and Michel Gautier (2003) Staphylococcus aureus and food poisoning

Ratih Dewanti-Hariyadi, Juli Hadiyanto and Eko Hari Purnomo ’Thermal resistance of local isolates of Staphylococcus aureus’ As. J. Food Ag-Ind. 2011, 4(04), 213-221

Paulina Regenthal, Jesper S. Hansen, Ingemar André, Karin Lindkvist-Petersson (2017) Thermal stability and structural changes in bacterial toxins responsible for food poisoning









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