低温調理

旋毛虫 トリヒナ 食中毒予防のために

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概要

旋毛虫(トリヒナ)Trichinella spiralis とは、旋毛虫症(トリヒナ症)の原因となる線虫である。ヒトはシストに包まれている被嚢幼虫を含む動物の肉を生、乾燥又は加熱不十分の状態で喫食した場合に感染するとされている。

シスト:原虫が皮膜で覆われ、一時的な自発活動休止様状態のもの

症状

100300程度の経口摂取により症状が発現し始め、10003000程度でより重篤な症状を起こすと考えられている。

① 消化管侵襲期 : ヒトが感染肉を食べると幼虫が脱嚢し直ちに消化管粘膜に侵入して成虫となり幼虫を産みはじめる。この時期の症状は消化器症状が主で、悪心、腹痛、下痢などを訴える。

② 幼虫筋肉移行期 : 幼虫が体内を移行し筋肉へ運ばれる時期で、感染後26週の間に見られ急性症状を呈する。すなわち眼窩周囲の浮腫、発熱、筋肉痛、皮疹、高度の好酸球増加(50 80%に達する)が現れる。筋肉痛は特に咬筋、呼吸筋に強く、摂食や呼吸が妨げられる。また幼虫の通過により心筋炎を起こし、死の原因となることがあるが、幼虫は心筋では披嚢しない。

③ 幼虫披嚢期 : 幼虫が身体各所の横紋筋で披嚢する時期で、感染後6週以後である。軽症の場合は除々に回復するが、重症の場合は貧血、 全身浮腫、心不全、肺炎などを併発し死亡することもある。

原因食品

野生動物の肉(クマ、イノシシ、シカ、アザラシ、ワニ等)、飼育動物の肉(ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌ、スッポン等)

予防・対策

凍結処理。

十分に加熱して食べる。71℃1分

T.spiralisの熱死点は約57℃です。 米農務省は、豚肉を52.2°Cで2時間、55.6°Cで15分間、60°Cで1分間調理することを義務づけています。

汚染実態

日本国内では、家畜の肉からトリヒナが検出された例は無い。

死滅温度と時間

T. spiralis の存在が想定される豚肉については全ての部位について、 -15℃2030日、-28.9℃612日で処理が可能とされている。加熱による殺滅条件は、同様にT. spiralisの存在が想定される豚肉について、50℃では9.5時間、60℃では1分、62.2℃で瞬間で処理できる。

凍結処理が極めて困難な種類(T.nativa, T.britovi など)もいる。

おわりに

食中毒の原因のひとつである旋毛虫(トリヒナ)について、正しく恐れるための参考になればと思います。正しく恐れ、正しく予防・対策をすることで食中毒にならないように。また高齢者、妊婦、小児等の一般的に抵抗力の弱い方については、より一層の注意が必要です。

 

参考:国立感染症研究所HP

内閣府 平成21年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」 社団法人 畜産技術協会作成 平成223

厚生労働省HP

「食品衛生の窓」東京都福祉保健局 HP

公益社団法人 日本食品衛生協会 HP

食品安全委員会 食肉の寄生虫汚染の実態調査と疫学情報に基づくリスク評価手法の開発

食品安全委員会 「微生物・ウイルス・寄生虫評価書 豚の食肉の生食に係る 食品健康影響評価」 2015年2月

MPI - Ministry for Primary Industries New Zealand HP

Department for Environment, Food & Rural Affairs - GOV.UK HP

GUIDELINES FOR THE CONTROL OF TRICHINELLA SPP. IN MEAT OF SUIDAE CAC/GL 86-2015 Adopted in 2015 FAO/WHO

H.R. Gamble ‘Parasites associated with pork and pork products’ Rev. sci. tech. Off. int. Epiz., 1997,16 (2), 496-506

 









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