低温調理

サルモネラ属菌 食中毒予防のために

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サルモネラ属菌が原因の食中毒は平成29年で、患者数1183人35件にのぼっています。これは細菌が原因の食中毒で、患者数でカンピロバクター、病原大腸菌、ウェルシュ菌に次ぐ4番目に多い数字で、件数でみるとカンピロバクターに次ぐ2番目に多いというのが現状です。

概要 

2菌種6亜種に分類されているが、ヒトから分離される同属菌のほとんどはSalmonella enterica subspecies enterica である。サルモネラ属菌は、菌体(O)抗原と鞭毛(H) 抗原により 2500 種類以上の血清型に分類されるが、チフス性疾患を引き起こすチフス菌(S. Typhi)やパラチフス菌(S. Paratyphi A)も含まれる。 本属菌は現在のところ、血清型で表記することが主流であることから、本来はSalmonella enterica subsp. enterica serovar Enteritidisと記載すべきであるが、通常、Salmonella Enteritidisと記載されることが多い。

出展:「食品衛生の窓」東京都福祉保健局ホームページより

特徴

サルモネラ属菌は自然界に広く生息し、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類から分離される他、上記動物からの汚染の結果として環境中とそこに生息する各種の生物にも見られる。とくに家畜(豚、鶏、牛)の腸内では、常在菌として保菌している。

発育条件

原因名 倍加時間 発症菌数 発育条件 至適条件
温度域 pH 水分活性 温度域 pH 水分活性
サルモネラ属菌 21分 105~106 きわめて少量の101~102で発症することも 5.2~46.2℃ 3.8~9.5 0.94以上 35~43℃ 7~7.5 0.99

倍加時間:世代時間、平均世代時間とも言う。微生物が1回分裂して倍の量になるのに要する時間。(ここでは栄養の十分にある発育に適した条件での数値)

pH:7なら中性、それより大きければアルカリ性、小さければ酸性

水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示される

症状

一般的には10510cfu/ヒトで発症 きわめて少量(101102)で発症することも

潜伏期間 648時間 平均15時間 小児の感染の場合34日後の発症も珍しくない。

悪心、嘔吐、腹痛、下痢、発熱

健康な成人は症状が胃腸炎でとどまる。

小児や高齢者では重篤になり、死亡することもある。

原因食品

サルモネラ菌による食中毒のほとんどは汚染食品の摂取に原因し、関連する食品には動物性、植物性を問わず、あらゆる種類の食品が含まれるが、S . Enteritidisによるものは鶏卵や鶏卵関連食品が原因であることが多い 。

卵(加工品を含む)、食肉(特に内臓類)の生食、食肉調理品(特に鶏肉)、うなぎやスッポン等。また、ネズミやペットを介して食品を汚染する場合がある。

予防・対策

  • 食肉や卵などを取り扱った手や調理器具はそのつど洗う。
  • 卵は新鮮なものを購入し、購入後は冷蔵保管する。
  • 割卵後は直ちに調理して早めに食べる、卵の割り置きはしない。
  • 食肉などは低温で扱う。
  • 十分な加熱調理。
  • ネズミ、ゴキブリ、ハエなどの駆除を行う。

汚染実態

  • 市販鶏肉の60%(182/304)からサルモネラが分離された(食品 安全委員会, 2007
  • 市販鶏卵2,030パック(10個入り)の卵殻及び卵内容物を調べたところ、卵殻の0.2%からサルモネラが分離された。卵内容物からは分離されなかった(Sasaki et al., 2011; 農林水産省, 2015a
  • 20119月~20123月に、と畜場で採取した110頭の豚肝臓を調査した結果、5点(5%)から菌が検出された(Sasaki et al., 2013c
  • 201012月~20112月の調査で、乳用牛農場25農場(250頭)中、1農場(8頭 )からサルモネラが検出された(Sasaki et al., 2013a

死滅温度と時間

D値は菌株、脂肪量、pH、水分活性その他の要素で異なります。D値とは菌数を10分の1にするのにかかる時間。

液卵でのSalmonella EnteritidisD値 (Brackett et al., 2001)

 56.7℃ 310秒~45

家禽類におけるサルモネラ属菌のD値 (ESR NZ,2015)※Regression 95th Percentile

 55℃ 47.4分 57℃ 24.7分 60℃ 9.3分 63℃ 3.5

牛肉、豚肉におけるサルモネラ属菌のD値 (ESR NZ,2015)※Regression 95th Percentile

 55℃ 49.2分 57℃ 24.5分 60℃ 8.6分 63℃ 3.1

鶏パテにおけるサルモネラ属菌6種のD値 (R. Y. MURPHY et al. ,2001)

 55℃ 26.97分 57.5℃ 14.55分 60℃ 8.09分 62.5℃ 3.98

ビーフパテにおけるサルモネラ属菌6種のD値 (R. Y. MURPHY et al. ,2001)

 55℃ 9.09分 57.5℃ 7.70分 60℃ 4.80分 62.5℃ 2.40

 

一般的に適当とされる5D7Dを達成する加熱時間

7Dつまり初期の菌数から10000000分の1にするのにかかる時間は

55℃では188.79分 鶏パテでのサルモネラ属菌6種のD値 (R. Y. MURPHY et al. ,2001)より計算(一例)

おわりに

食中毒の原因のひとつであるサルモネラ菌について、正しく恐れるための参考になればと思います。正しく恐れ、正しく予防・対策をすることで食中毒にならないように。また高齢者、妊婦、小児等の一般的に抵抗力の弱い方については、より一層の注意が必要です。

D値を載せてありますが、あくまでサルモネラ菌についてだけのものであり、他にも食中毒の原因となる菌やウイルスなどあります。ですのでこれだけでは、この温度と時間での低温調理が安全であるか判断できるものではありません。

 

参考:国立感染症研究所HP

農林水産省 食品安全に関するリスクプロファイルシート

食品安全委員会 鶏卵中のサルモネラ・ エンテリティディス

内閣府 平成21年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」 社団法人 畜産技術協会作成 平成223

厚生労働省HP

「食品衛生の窓」東京都福祉保健局 HP

公益社団法人 日本食品衛生協会 HP

MPI - Ministry for Primary Industries New Zealand HP

anses  Data sheet on foodborne biological hazards

FDA Draft Guidance for Industry: Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food

Michael P. Doyle and Larry R.Beuchat (1995) ’Food Microbiology Third Edition’

D and z valuesfor the heat inactivation of pathogens in raw meat Final Report MPI Technical Paper No: 2016/05 INSTITUTE OF ENVIRONMENTAL SCIENCE AND RESEARCH LIMITED New Zealand

R. Y. MURPHY, L. K. DUNCAN, E. R. JOHNSON, M. D. DAVIS, AND J. N. SMITH (2001) Thermal Inactivation D- and z-Values of Salmonella Serotypes and Listeria innocua in Chicken Patties, Chicken Tenders, Franks, Beef Patties, and Blended Beef and Turkey Patties

FSIS Salmonella Compliance Guidelines for Small and Very Small Meat and Poultry Establishments that Produce Ready-to-Eat (RTE) Products and Revised Appendix A June 2017

Risk Assessment of the Impact of Lethality Standards on Salmonellosis from Ready-to-Eat Meat and Poultry Products Final Report, Decisionalysis Risk Consultants, Inc. Ottawa, Ontario, Canada K1H 6S3, 2005

Russell P. McMinn, Amanda M. King, Andrew L. Milkowski,Robert Hanson,Kathleen A. Glass and Jeffrey J. Sindelar (2017) Processed Meat Thermal Processing Food Safety - Generating D-Values for Salmonella, Listeria monocytogenes, and Escherichia coli.

V.K. JUNEJA, B.S. EBLEN, AND G.M. RANSOM ’Thermal Inactivation of Salmonella spp. in Chicken Broth, Beef, Pork, Turkey, and Chicken: Determination of D- and Z-values’ JOURNAL OF FOOD SCIENCE—Vol. 66, No. 1, 2001 146-152

FilipaV.M. Silvaa, Paul A. Gibbs (2011) 'Thermal pasteurization requirements for the inactivation of Salmonella in foods' Food Research International Volume 45, Issue 2, March 2012, Pages 695-699 

 









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