低温調理

カンピロバクター属菌 食中毒予防のために

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カンピロバクター属菌が原因の食中毒は平成29年で、患者数2315人、発生件数320件にのぼっています。これは食中毒の患者数で14.1%でノロウイルスについで2番目の多さ、件数で31.6%で一番目の多さになっています。

概要 

カンピロバクター属には24の菌種及び亜種が含まれ、Campylobacteraceae, Campylobacter jejuni 及びCampylobacteraceae, Campylobacter coli カンピロバクター・ジェジュニ 及びカンピロバクター・コリが主な食中毒の原因。

出展:「食品衛生の窓」東京都福祉保健局ホームページより

特徴 

鳥類、牛、豚、羊、犬猫などの腸内に存在。

鶏、牛はジェジュニ、豚はコリの保菌率が高い。

熱、乾燥に弱い。

発育条件 

酸素濃度515%で増殖。大気中(酸素濃度約 21%)や、酸素が全くない環境では増殖できない。食品中ではほとんど増殖しない。

原因名 倍加時間 発症菌数 発育条件 至適条件
温度域 pH 水分活性 温度域 pH 水分活性
カンピロバクター属菌 約1時間 500以上 100程度でも感染あり 31~46℃ 4.9~9.0 0.99以上 42~43℃ 6.5~7.5 0.99

倍加時間:世代時間、平均世代時間とも言う。微生物が1回分裂して倍の量になるのに要する時間。(ここでは栄養の十分にある発育に適した条件での数値)

pH:7なら中性、それより大きければアルカリ性、小さければ酸性

水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示される

症状

少量菌量(400500/ヒト)でも感染を起こす。100個程度での感染もあり。

潜伏期間 27日 平均23

下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感。重症例では大量の水様性下痢のため、脱水症状がみられる。

腸炎の諸症状の他、敗血症、関節炎、また、まれに髄膜炎、ギラン・バレー症候群やミラー・フィッシャー症候群などを発症する場合がある。

 ギラン・バレー症候群:手足の筋力が低下し、症状が進行すると完全四肢麻痺や呼吸麻痺に至ることもある。症状が数週間持続した後、徐々に回復に向かうのが一般的である。カンピロバクター感染が同症候群を誘発する要因の一つとして考えられているが、その機序等は未解明。

※急性の外眼筋麻痺・運動失調・腱反射消失を三徴とする。近年はフィッシャー症候群と呼ばれることが多い。

原因食品

カンピロバクターによる食中毒は、食べてから発症するまでの潜伏期間が長いため原因食品を特定できないことが多い。原因の判明したもの多くは

  • 生や加熱不十分の鶏料理(鶏の刺身、タタキ、レバー)
  • 生の肉からの野菜などへの二次汚染
  • 消毒不足の井戸水、湧き水

予防・対策

  • 生の肉にさわったら、よく手を洗う。
  • 生又は加熱不十分な鶏肉や鶏レバー、牛レバーを食べない。特に鶏肉などの食肉は、十分な加熱を行う。(豚肉、豚レバー、牛肉、ジビエなどについてもE型肝炎ウイルス、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌等による食中毒を防ぐ観点から生で食べない。)
  • 二次汚染防止のために食肉を調理した後は、すぐに手や調理器具をよく洗う。
  • 調理器具や食器は、熱湯で消毒し、よく乾燥させる。
  • 保存時や調理時に、肉と他の食材(野菜、果物等)との接触を防ぐ。
  • 殺菌されてない井戸水や湧き水などは飲まない。

汚染実態

動物については、鶏、牛などはカンピロバクター・ジェジュニを高率(10.3%~100%)に保菌しています。食品の中では、鶏肉がとくに高率に汚染されていることが認められています。また牛の肝臓は、表面だけでなく内部まで汚染されているとの報告があります。しかし、牛肉の汚染率は、と畜場の衛生対策や、換気された低温室でのと体の保存によって低く抑えられています。ブタの肝臓も内部まで汚染されているとの報告があります。豚では、カンピロバクター・コリの保菌率が高くなっています(数%~100)

農林水産省のブロイラー鶏群から製造された中抜きと体及び鶏肉のカンピロバクター濃度調査では

今回、調査対象となったブロイラー鶏群の90%(18/20)がカンピロバクター陽性でした。また、カンピロバクター陽性の各鶏群内の、鶏個体のカンピロバクター保有率は、17鶏群で100%(10/10)、残りの1鶏群では60%(6/10)でした。カンピロバクターを保有している鶏個体の96%(168/176)では、盲腸内容物中の菌濃度は1.0×104 cfu/g以上でした。

カンピロバクター陽性の18鶏群から製造された中抜きと体は、全ての試料(90/90)からカンピロバクターが分離され、その菌濃度の平均は6.3×103 cfu/と体でした。

一方、カンピロバクター陰性の2鶏群から製造された全ての中抜きと体(10/10)からも、カンピロバクターが分離されました。これら2鶏群のうち、あるカンピロバクター陽性鶏群の直後に処理された陰性鶏群から製造された中抜きと体の菌濃度の平均は6.0×101 cfu/と体でした。別の1処理日に、カンピロバクター陽性鶏群より前に処理された陰性鶏群から製造された中抜きと体については、全てが定量限界値(5.0×101cfu/と体)未満でした(定性試験でのみ菌を分離)。

鶏肉については、カンピロバクター陽性の18鶏群から製造された鶏肉の91%(246/270)、陰性の2鶏群から製造された鶏肉の27%(8/30)からカンピロバクターが分離されました(表10)。また、カンピロバクター陽性鶏群から製造された肝臓の菌濃度の平均は4.0×102 cfu/gであり、一方、陰性鶏群から製造された肝臓の菌濃度は定量限界値(1.0×102cfu/g)未満でした(定性試験でのみ菌を分離)。

10:鶏肉のカンピロバクター汚染状況

鶏群 鶏肉 試料点数 陽性点数 陽性率(%)
カンピロバクター陽性鶏群 全体 270 246     91   
ムネ肉   90   89  99
ササミ   90   67  74
肝臓   90   90 100
カンピロバクター陰性鶏群 全体   30     8   27
ムネ肉   10     1   10
ササミ   10     2   20
肝臓   10     5   50

 

カンピロバクター陰性鶏群から製造された全ての汚染鶏肉(8点)が、ある陽性鶏群の直後に処理された陰性鶏群から製造された鶏肉であり、かつ、その陽性鶏群から分離されたカンピロバクターと同じ性状(菌種及びフラジェリン遺伝子の型)の菌が分離されました。これとは別の処理日に、ある陽性鶏群の前に処理された陰性鶏群から製造された鶏肉からは、菌は分離されませんでした。

食肉処理場での二次感染により鶏肉の多くはカンピロバクターが存在している。目には見えない微生物ですが、スーパーなどで手に取るときからそこにカンピロバクターは存在するものだと考えて食中毒にならない対応をしてください。

死滅温度と時間

D値は菌株、脂肪量、pH、水分活性その他の要素で異なります。D値とは菌数を10分の1にするのにかかる時間。

鶏肉におけるC. jejuni D値 (食品安全委員会, 2009)

 55℃ 2.122.25分 57℃ 0.790.98

カンピロバクターのD値 (the Ministry of Health NZ by ESR Ltd,2001)

 50℃ 1~6.3分  55℃ 0.6~2.3分  60℃ 0.2~0.3

培養液中のC. jejuni D値 (ALI AL SAKKAF AND GEOFF JONES ,2012)

 ST-45P 51.5℃ 174.7秒 53.5℃ 55.2秒 56.5℃ 10.6秒 60.0℃ 1.3

 ST-190H 51.5℃ ND 53.5℃ 126.5秒 56.5℃ 26.3秒 60.0℃ 4.2

ST-〇〇は菌株名

一般的に適当とされる5D7Dを達成する加熱時間

7D、つまり初期の菌数から10000000分の1にするのにかかる時間は

55℃では15.75分 (食品安全委員会, 2009)より計算(一例)

おわりに

食中毒の原因のひとつであるカンピロバクターについて、正しく恐れるための参考になればと思います。正しく恐れ、正しく予防・対策をすることで食中毒にならないように。また高齢者、妊婦、小児等の一般的に抵抗力の弱い方については、より一層の注意が必要です。

55℃より低い温度でのD値もありますが、あくまでカンピロバクターについてだけのものであり、他にも食中毒の原因となる菌やウイルスなどあります。55℃より低い温度での低温調理が安全というものではありません。他の微生物でも、D値を使った安全性の検討で55℃以下の温度でのデータが少ないため安全性を十分に担保できるものではありません。また、54℃でも死なないウエルシュ菌があるとの研究もあるので、そのような温度での低温調理を推奨するものではありません。

 

参考:国立感染症研究所HP

農林水産省 食品安全に関するリスクプロファイルシート

食品安全委員会 ファクトシート

内閣府 平成21年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」 社団法人 畜産技術協会作成 平成223

厚生労働省HP

「食品衛生の窓」東京都福祉保健局 HP

公益社団法人 日本食品衛生協会 HP

MPI - Ministry for Primary Industries New Zealand HP

FDA Draft Guidance for Industry: Hazard Analysis and Risk-Based Preventive Controls for Human Food

anses  Data sheet on foodborne biological hazards

Michael P. Doyle and Larry R.Beuchat (1995) ’Food Microbiology Third Edition’

ALI AL SAKKAF AND GEOFF JONES (2012)Thermal Inactivation of Campylobacter jejuni in Broth

L C Blankenship and S E Craven (1981) Campylobacter jejuni survival in chicken meat as a function of temperature Appl Environ Microbiol. 1982 Jul; 44(1): 88–92.

Review of Microbial Pathogen Inactivation Relevant to Sous Vide Cooking at Temperatures below 55°C’ MPI Technical Paper No: 2017/35 Prepared for MPI by Beverley Horn and Joanne Hewitt (ESR) Helen Withers, Lisa Olsen and Janet Lymburn (MPI) August 2016

農林水産省HP ブロイラー鶏群から製造された中抜きと体及び鶏肉のカンピロバクター濃度調査

一般財団法人 食品産業センターHP HACCP関連情報データベース









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