低温調理

ウエルシュ菌 食中毒予防のために

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ウエルシュ菌による食中毒は平成29年で発生件数27件2.7%、患者数1,220人7.4%となっており、1件当たりの患者数が他の微生物が原因の食中毒よりも多い。

概要 

ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)芽胞を形成する偏性嫌気性の細菌。腸管内で増殖し、芽胞を形成する時に産生されるエンテロトキシンによって食中毒になる。ウエルシュ菌は産生する毒素によってA型からE型までの5種類に分類されるが、食中毒を引き起こす菌のほとんどはA型ウエルシュ菌に属す。

出展:「食品衛生の窓」東京都福祉保健局ホームページより

特徴

  • ウエルシュ菌は、芽胞を形成する細菌で、ヒトや動物の腸内、土壌・水中など自然界に広く分布している。
  • 食中毒は主に耐熱性芽胞(100℃16時間でも生残)を形成する菌によって引き起こされる。
  • 緩慢に冷却すると本菌は55℃位から急速に増殖する。
  • 家庭での食中毒発生は他の微生物に比べて少ない。
  • 1件当たりの患者数が他の細菌性食中毒と比較して圧倒的に多い。

発育条件

原因名 倍加時間 発症菌数 発育条件 至適条件
温度域 pH 水分活性 温度域 pH 水分活性
ウエルシュ菌 10分未満 108109 10~52℃ 5~9 0.95以上 37~45℃ 7 0.98

倍加時間:世代時間、平均世代時間とも言う。微生物が1回分裂して倍の量になるのに要する時間。(ここでは栄養の十分にある発育に適した条件での数値)

pH:7なら中性、それより大きければアルカリ性、小さければ酸性

水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示される

症状

108109 cfu/ヒト の摂取することで発症する。

潜伏時間 通常618時間  平均10時間

一過性の腹痛・下痢、下腹部の張り

ウエルシュ菌が産生する溶血毒のために急死する敗血症例も報告されている。

原因食品

肉類、魚介類、野菜を使用した煮込み料理が多い。 大量に加熱調理された後、そのまま数時間から一夜放置されたスープやカレー、シチューなど。

予防・対策

  • 作り置きはせず、加熱調理したらすぐに食べる。
  • 一度に大量に作る場合、菌が発育するような温度が長く続かないようする。
  • すぐに食べないのであれば、鍋ごと自然に冷ますのではなく小分けにして急冷する。
  • 再加熱する場合は、かくはんしながら十分に加熱する。

汚染実態

食肉の汚染率が数%~50数%と高く、1104 cfu/g検出されているが、これらすべてがエンテロトキシンを産生するわけではない。 (食品安全委員会, 2011

死滅温度と時間

D値は菌株、脂肪量、pH、水分活性その他の要素で異なります。D値とは菌数を10分の1にするのにかかる時間。

豚ランチョンロールにおけるウエルシュ菌のD値 (B.Byrne et al. ,2006)

栄養細胞 55℃ 16.3分 65℃ 0.9

芽胞 90℃ 34.2分 100℃ 2.2

ウエルシュ菌のD値 (MPI ,2010)

栄養細胞 70℃ 23(平均) 126(95th percentile) 146データポイントに基づく

芽胞 120℃ 18(平均) 161(95th percentile) 64データポイントに基づく

percentile :計測値の分布(ばらつき)を小さい数字から大きい数字に並べ変え、パーセント表示することによって、小さい数字から大きな数字に並べ変えた計測値においてどこに位置するのかを測定する単位。例えば、計測値として100個ある場合、95パーセンタイルであれば小さい方から数えて95番目に位置する。

エンテロトキシンは熱に不安定なタンパク質であり、60℃5分間加熱することによって不活性化されますが、一般に食物中で産生されません。(McDonel, 1986)

平均最大生育温度53.3℃±0.7℃ (染色体cpe遺伝子を保有する8つの分離株)という研究結果もあるので55℃より低い温度での低温調理を考えている人は注意。

一般的に適当とされる5D7Dを達成する加熱時間

7D、つまり初期の菌数から10000000分の1にするのにかかる時間は

55℃では114.1分 栄養細胞(B.Byrne et al. ,2006)より計算(一例)

芽胞については耐熱性が高いため一般的な低温調理の温度域では不活化できない。

おわりに

食中毒の原因のひとつであるウエルシュ菌について、正しく恐れるための参考になればと思います。正しく恐れ、正しく予防・対策をすることで食中毒にならないように。また高齢者、妊婦、小児等の一般的に抵抗力の弱い方については、より一層の注意が必要です。

D値も載せてありますが、あくまでウエルシュ菌についてだけのものであり、他にも食中毒の原因となる菌やウイルスなどあります。ですのでこれだけでは、この温度と時間での低温調理が安全であるか判断できるものではありません。

 

参考:国立感染症研究所HP

農林水産省 食品安全に関するリスクプロファイルシート

食品安全委員会 ファクトシート

内閣府 平成21年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」 社団法人 畜産技術協会作成 平成223

厚生労働省HP

「食品衛生の窓」東京都福祉保健局 HP

公益社団法人 日本食品衛生協会 HP

MPI - Ministry for Primary Industries New Zealand HP

Pathogen resistance and adaptation to heat stress. V. Juneja, United States Department of Agriculture, USA and. J. Novak, American Air Liquide, USA. USAD

Michael P. Doyle and Larry R.Beuchat (1995) ’Food Microbiology Third Edition’

B.Byrne, G.Dunne, D.J.Bolton Thermal inactivation of Bacillus cereus and Clostridium perfringens vegetative cells and spores in pork luncheon roll’ Food Microbiolgy. 2006 Dec;23(8):803-8  

MPI 'Clostridium perfringens - Microbial pathogen data sheet' 2010









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