おいしく安全に安心して低温調理をするための手引き。食中毒のリスクを減らすためにもしっかりした知識を持とう。各リンクから個別ページに飛べます。
低温調理のメカニズム
普段の料理で肉を焼けば、赤みが消えていき硬くなる、焼き過ぎればさらに硬くなる。長時間に込むと繊維がほぐれ噛まなくてもいいくらいの柔らかさになる。と言った誰もがわかっている変化を、科学的にたんぱく質の温度による変化について書いてあります。低温調理のメカニズム〉〉
加熱温度と時間
低温調理の安全性
低温調理のガイドラインが日本にはないので、代用できるような基準として特定加熱食肉製品、加熱食肉製品の加工基準の解説、安全性の考え方。
豚の食肉の中心部の温度を63℃で30分以上加熱するか、これと同等以上の殺菌効果がある方法で加熱殺菌すること。
「鶏肉、ジビエ、ひき肉料理、テンダライズ又はタンブリングされた食肉、結着肉、牛内臓肉、客が自ら焼く食肉」は中心部温度の測定し、75℃1分と同等以上の加熱ができていること。(75℃1分と63℃30分は同等)
63℃30分と同等の加熱温度と時間Ⅱで、55℃から75℃までの加熱温度と時間をまとめています。
63℃30分の加熱殺菌の根拠についての考察。
食中毒の原因となる微生物については個別ページで。
原因名 | 倍加時間 | 発症菌数 | 発育条件 | 至適条件 | ||||
温度域 | pH | 水分活性 | 温度域 | pH | 水分活性 | |||
カンピロバクター属菌 | 約1時間 | 500以上 100程度でも感染あり | 31~46℃ | 4.9~9.0 | 0.99以上 | 42~43℃ | 6.5~7.5 | 0.99 |
サルモネラ属菌 | 21分 | 105~106 きわめて少量の101~102で発症することも | 5.2~46.2℃ | 3.8~9.5 | 0.94以上 | 35~43℃ | 7~7.5 | 0.99 |
リステリア菌 | 126分 | 106 /g 健康状態より個人差あり | -1.5~45℃ | 5.6~9.6 | 0.92以上 | 30~35℃ | 7 | 0.99 |
病原大腸菌 | 17分 | 10~100程度 | 7~46℃ | 4.4~9 | 0.95以上 | 35~40℃ | 6~7 | 0.99 |
エルシニア菌 | 43.5分 | 104~106 | 0~44℃ | 4~10 | 0.98以上 | 28~29℃ | 7.2~7.5 | 0.99 |
黄色ブドウ球菌 | 27分 | 毒素による発症 | 6.7~48℃ | 4~9.6 | 0.83以上 | 35~40℃ | 6~7 | 0.98 |
セレウス菌 | 17分 | 105~108/gと毒素によるものので別症状 | 10~48℃ | 4.9~9.3 | 0.91以上 | 28~35℃ | 6~7 | 0.98 |
ウエルシュ菌 | 10分未満 | 108~109 | 10~52℃ | 5~9 | 0.95以上 | 37~45℃ | 7 | 0.98 |
ボツリヌス菌 Ⅰ群 | 35分 | 毒素による発症 | 10~48℃ | 4.0~9.6 | 0.94以上 | 37~40℃ | 6~7 | 0.98 |
Ⅱ群 | 3.3~45℃ | 5.0~9.6 | 0.97以上 | 30℃ | 6~7 | 0.99 |
※表についてデータの出展によって多少の違いがあり
倍加時間:世代時間、平均世代時間とも言う。微生物が1回分裂して倍の量になるのに要する時間。(ここでは栄養の十分にある発育に適した条件での数値)
pH:7なら中性、それより大きければアルカリ性、小さければ酸性
水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示される
豚肉の低温調理を考えている方はリスクを理解したうえで、判断してください。
低温調理の注意点
食中毒のリスクを減らすための食材の準備から低温調理の技術的な注意点、気をつけること。
まとめ
今朝の朝食も、昨日の晩御飯も、食品について「ゼロリスクはない」ということを理解して、「納得した上での選択」が重要です。「納得」するためには、情報・知識が必要です。低温調理の手引きとして、リンクのページに一通り目を通してもらえれば安全に低温調理を行うために必要な情報、知識、判断基準は提供できていると思います。低温調理を安全にするために参考になれば。
参考文献については個別ページを参照してください。