低温調理

エルシニア菌 食中毒予防のために

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エルシニア菌による食中毒は平成29年で、1件患者数7人でした。過去の例から見ると二次汚染されたサラダなど加熱しないで食べるものが主な原因となっている。

概要

エルシニア・エンテロコリチカ (Yersinia enterocolitica)通常、生物型別と血清型別が行われており、生物型は 8 つの生化学的性状の違いにより 5 種の生物型に分けられている。血清型別は通常 O 抗原による型別が行われ、現在、51 の O 血清群に分けられている。ヒトに病原性を示すものは生物型と血清型の特定の組み合わせに限られており、O3(3 または 4)、O4,32(1)、O5,27(2)、O8(1)、O9(2)、O13a,13b(1)、O18(1)、O20(1)および O21(1)(カッコ内は生物型)の 9 血清群がヒトに病原性を示す。

出展:国立感染症研究所 ホームページより

特徴

ブタやイヌ等の動物の腸管内、土壌や水などの環境に広く分布する。大部分は非病原性であり、ブタでは病原株の高い保菌が認められる。 (小久保, 2005

冷蔵庫内の食品中でも増殖し、食中毒を起こす。

発育条件

原因名 倍加時間 発症菌数 発育条件 至適条件
温度域 pH 水分活性 温度域 pH 水分活性
エルシニア 43.5分  104106 0~44℃ 4~10 0.98以上 28~29℃ 7.2~7.5 0.99

倍加時間:世代時間、平均世代時間とも言う。微生物が1回分裂して倍の量になるのに要する時間。(ここでは栄養の十分にある発育に適した条件での数値)

pH:7なら中性、それより大きければアルカリ性、小さければ酸性

水分活性:食品の水分は%で表さないで、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す水分活性Aw(Water activity)として表示される

症状

104106(推定)で発症する(FDA, 2012)

潜伏期間 2~5日

発熱、下痢、腹痛などを主症状とする胃腸炎 年齢が高くなるにつれて、他にもさまざまな症状を示すことがある。

原因食品

食肉(特に豚肉)加工品 ・ 野菜サラダ ・ 諸外国では、生乳、チョコレート、豆腐、もやしなど。

汚染された沢水や井戸水の摂取による水系感染。

予防・対策

生の肉(特に豚肉)からの二次汚染を防ぐ。通常の加熱調理で殺菌できる。

  • 豚肉を長期間保存しない。
  • 生の肉をさわったら、手を洗う。
  • 包丁やまな板を使うときは、先に生野菜などの加熱しない食品を切り、生の肉は後で切る。生の肉に使った包丁やまな板と、調理済みの食品がふれないようにする。
  • 肉の汁が、生で食べるものや調理済みの食品にかからないようする。
  • 通常の加熱調理で容易に死滅するので、生の肉など加熱が必要な食品は中心まで十分に加熱。
  • 生の肉に使った調理器具は、使い終わったらすぐに洗う。洗った後、熱湯をかけると消毒効果あり。

汚染実態

食肉、特に生の豚肉に限られており、豚肉から比較的高率に分離。

死滅温度と時間

D値は菌株、脂肪量、pH、水分活性その他の要素で異なります。D値とは菌数を10分の1にするのにかかる時間。

牛ひき肉におけるエルシニア菌のD値 (D.J. Bolton et al. ,2000)

50℃ 21.2分 55℃ 1.92分 60℃ 0.97

エルシニア菌のD値 (MPI, 2010)

55°C ~2分  60°C ~0.5分  65°C ~2

一般的に適当とされる5D7Dを達成する加熱時間

7D、つまり初期の菌数から10000000分の1にするのにかかる時間は

55℃では14分 (MPI, 2010)より計算(一例)

おわりに

食中毒の原因のひとつであるエルシニア菌について、正しく恐れるための参考になればと思います。正しく恐れ、正しく予防・対策をすることで食中毒にならないように。また高齢者、妊婦、小児等の一般的に抵抗力の弱い方については、より一層の注意が必要です。

55℃より低い温度でのD値もありますが、あくまでエルシニア菌についてだけのものであり、他にも食中毒の原因となる菌やウイルスなどあります。55℃より低い温度での低温調理が安全というものではありません。他の微生物でも、D値を使った安全性の検討で55℃以下の温度でのデータが少ないため安全性を十分に担保できるものではありません。また、54℃でも死なないウエルシュ菌があるとの研究もあるので、そのような温度での低温調理を推奨するものではありません。

 

参考:国立感染症研究所HP

農林水産省 食品安全に関するリスクプロファイルシート

食品安全委員会 ファクトシート

内閣府 平成21年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」 社団法人 畜産技術協会作成 平成223

厚生労働省HP

「食品衛生の窓」東京都福祉保健局 HP

公益社団法人 日本食品衛生協会 HP

MPI - Ministry for Primary Industries New Zealand HP

anses  Data sheet on foodborne biological hazards

Michael P. Doyle and Larry R.Beuchat (1995) ’Food Microbiology Third Edition’

D.J. Bolton C.M. McMahon A.M. Doherty J.J. Sheridan , D.A. McDowell I.S. Blair and D. Harrington ’Thermal inactivation of Listeria monocytogenes and Yersinia enterocolitica in minced beef under laboratory conditions and in sous-vide prepared minced and solid beef cooked in a commercial retort’Journal of Applied Microbiology 2000, 88, 626-632

JOSEPH LOVETT, JOE G. BRADSHAW, AND JAMES T. PEELER ’Thermal inactivation of Yersinia enterocolitica in milk’ APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY, Aug. 1982, p. 517-519

 









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