低温調理

低温調理の安全性

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こどもの頃「豚肉はよく焼いて食べなさい」と言われていた記憶がみなさんあるのではないかと思います。そこで当然、低い温度で調理しておなかを壊したり食中毒の心配はないのか?という疑問が沸いてきます。

安全のラインはどこに引くのか

  1. 個々のリスクを考え、食中毒の原因菌・ウイルスについて調べ個人的判断で低い温度、短い加熱時間で自分がおなかを壊さなければ安全。
  2. すべての食中毒の原因菌・ウイルスを完全に死滅させる。
  3. 国の食品別の規格基準の加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の加熱温度と時間を使って安全を担保する。

1.に関しては、やめておいた方がいいです。他のサイトやブログで「豚肉の食中毒のリスクは〇〇、〇〇…」と他にも忘れてるのありますよ?と思ったりもしますし、『豚肉を「63℃瞬時」と同等の加熱の特定加熱食肉製品の加熱温度と時間を持ち出してる』ものや、『英文のものを一部分しか訳していなくて間違った意図を伝えている』ものも見かけたので、個人で調べるにしても微生物でしかも健康にかかわるものなので、公的な機関ないし専門家のものを参考にしてください。一般人がまとめたものを参考にするなら、その元の論文や公のデータなどをしっかり確認してからにしてください。すべてが正しい情報なのかわかりません。正確に中心温度をモニタリングしながらの調理ですべてのリスクを把握しているのであれば言うことはありません。

2.に関しては、一般の調理では現実的ではないです。たとえばブドウ球菌の出す毒素エンテロトキシンは100℃1時間ではほとんど変化はなく、210℃30分で不活性化します。このような温度の調理はできません。ブドウ球菌をつけない増やさない前提での調理でリスクは回避できますが、食中毒を過度に恐れすぎていると。

3.誰かと食べる、誰かに勧めるうえで、無責任に加熱温度と時間を載せるわけにもいけませんし、ほとんどの皆さんが微生物の専門家でもないので、国の定めた基準に準拠することで安全を確保しましょう。63℃30分の加熱殺菌の根拠については別ページで考察してます。

というわけで安全のラインは、国の食品別の規格基準の加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の加熱温度と時間を使うというところに引きます。

特定加熱食肉製品

しっかりとした衛生管理をした上でローストビーフくらいにしか適用しない基準と考えてください。フォークなどで味が中に入るようにと穴を開けたり、マリネしたらこちらの基準ではなく加熱食肉製品の安全基準に従うこと。

その温度と時間は以下のとおりです。

3.特定加熱食肉製品
特定加熱食肉製品は、次の基準に適合する方法で製造しなければならない。
a 製造に使用する原料食肉は、と殺後 24 時間以内に4°以下に冷却し、かつ、冷却後4°以下で保存した肉塊で pH が 6.0 以下でなければならない。
b 製造に使用する冷凍原料食肉の解凍は、食肉の温度が 10°を超えることのないようにして行わなければならない。
c 製造に使用する原料食肉の整形は、食肉の温度が 10°を超えることのないようにして行わなければならない。
d 食肉の塩漬けを行う場合には、肉塊のままで、乾塩法又は塩水法により行わなければならない。
e 塩漬けした食肉の塩抜きを行う場合には、5°以下の食品製造用水を用いて、換水しながら行わなければならない。
f 製造に調味料等を使用する場合には、食肉の表面にのみ塗布しなければならない。
g製品は、肉塊のままで、その中心部を次の表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならない。この場合において、製品の中心部の温度が 35°以上52°未満の状態の時間を 170 分以内としなければならない。

第1欄 第2欄
55℃ 97分
56℃ 64分
57℃ 43分
58℃ 28分
59℃ 19分
60℃ 12分
61℃ 9分
62℃ 6分
63℃ 瞬時

食品別の規格基準について 食肉製品より引用抜粋

※肉の中心温度がその温度になってからの加熱時間であって、調理時間ではありません。

加熱食肉製品

ほとんどの肉の加熱がこちらの基準で調理すればいいです。中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならない。

平成23年の腸管出血性大腸菌による食中毒事件をうけて、豚の食肉の中心部の温度を63℃で30分以上加熱するか、これと同等以上の殺菌効果がある方法で加熱殺菌することと改正されています。また、千代田区の一般の飲食店等が取り組みやすく、その衛生管理を積極的に評価する仕組みとして「食の安全自主点検店公表制度」なかで「鶏肉、ジビエ、ひき肉料理、テンダライズ又はタンブリングされた食肉、結着肉、牛内臓肉、客が自ら焼く食肉」は中心部温度の測定し、75℃1分と同等以上の加熱ができていること。(75℃1分と63℃30分は同等)

※デンダライズとは金属の刃を用いて、肉の原型を保ったまま、筋及び繊維を短く切断する処理。タンブリングとは肉の内部まで調味液を浸み込ませる処理(機械的に注入する処理も含む)。

4.加熱食肉製品
加熱食肉製品は、次の規格に適合する方法で製造しなければならない。
a 製品は、その中心部の温度を 63°で 30 分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法(魚肉を含む製品であって気密性のある容器包装に充てんした後殺菌するものにあっては、その中心部の温度を 80°で 20 分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法)により殺菌しなければならない。
b 加熱殺菌後の冷却は、衛生的な場所において十分行わなければならない。この場合において、水を用いるときは、飲用適の流水で行わなければならない。
c 加熱殺菌した後容器包装に入れた製品にあっては、冷却後の取扱いは、衛生的に行わなければならない。

食品別の規格基準について 食肉製品より引用抜粋

以下「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」の法改正された豚肉の加熱基準です。

第2 改正の内容 法第 11 条第1項の規定に基づき、食品、添加物等の規格基準(以下「規格基準」という。)第1食品の部B食品一般の製造、加工及び調理基準の項の9に、新たに豚の食肉の基準を追加し、以下のとおり改正したこと。牛の肝臓又は豚の食肉は,飲食に供する際に加熱を要するものとして販 売の用に供されなければならず,牛の肝臓又は豚の食肉を直接一般消費者に販売する場合は,その販売者は,飲食に供する際に牛の肝臓又は豚の食肉の中心部まで十分な加熱を要する等の必要な情報を一般消費者に提供しなければならない。ただし,第1食品の部D 各条の項○ 食肉製品に 規定する製品(以下9において「食肉製品」という。)を販売する場合については,この限りでない。 販売者は,直接一般消費者に販売することを目的に,牛の肝臓又は豚の 食肉を使用して,食品を製造,加工又は調理する場合は,その食品の製造, 加工又は調理の工程中において,牛の肝臓又は豚の食肉の中心部の温度を 63℃で 30 分間以上加熱するか,又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならない。ただし,一般消費者が飲食に供する際 に加熱することを前提として当該食品を販売する場合(以下9において「加熱を前提として販売する場合」という。)又は食肉製品を販売する場合については,この限りでない。加熱を前提として販売する場合は,その販売者は,一般消費者が飲食に供する際に当該食品の中心部まで十分な加熱を要する等の必要な情報を一般消費者に提供しなければならない。

 食安発0602第2号「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」より引用抜粋

63℃で30分間加熱する方法ど同等の加熱温度と時間については低温調理 63℃30分と同等の加熱温度と時間>>で詳しく書いていますので、そちらを参考にしてください。

まとめ

個々の食中毒の原因菌・ウイルスに対し素人がにわか知識で安全を考えるより専門家が検討して出した国の安全基準に従うほうが合理的で間違いはないだろう。これを読んでくださった方には食中毒にはなってほしくないのでリスクを減らすためにも熟慮してください。

はじめの疑問「低い温度で調理しておなかを壊したり食中毒の心配はないのか?」ですが、「適切な温度と加熱時間で調理すれば安全といえる」というのが答えです。家庭での低温調理に関するガイドラインはないので、飲食店や食品加工製造の基準にしたがって安全といっています。ですが加熱温度と時間だけに注意を払うのではなく、調理環境にも衛生面で十分配慮してください。

最後に、低温調理に関係なく食べ物を食べるということは、昨日食べた晩ごはんも、今日食べた朝ごはんであっても、食中毒のリスクがゼロというわけではありません。それをできる限り減らし安全(社会的に許容できるライン)にするのが適切な加熱調理・殺菌だということです。

目には見えない食中毒の原因菌・ウイルスを適切に恐れるために、下のリンクに食中毒関連のものがあるので目を通していただければと思います。

 

参考:Douglas E. Bakdwin (2012)“Sous Vide Cooking: A review”International Journal of Gastronomy and Food Science 1 pages15-30

厚生労働省HP 食品別の規格基準について

厚生労働省 食安発0602第2号「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」PDF

厚生労働省HP お肉はよく焼いて食べよう

厚生労働省HP 細菌による食中毒

厚生労働省 豚の食肉の基準に関するQ&AについてPDF

千代田区HP 千代田区食の安全自主点検店公表制度

滋賀県食品自主衛生管理認証 セーフードしが 導入ハンドブック 参考資料PDF

食品安全委員会 相手を知ってやっつけよう~主な細菌性食中毒の特徴と対策~PDF

食品安全委員会HP 食中毒予防のポイント

農林水産省HP 食中毒をおこす細菌・ウイルス・寄生虫図鑑

東京都福祉保健局HP 「食品衛生の窓」 食中毒を起こす微生物

東京都 食中毒予防ガイドPDF

国立感染症研究所HP









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